わあって泣くこども。ひらひらちょうちょを追う

ひらひらするちょうちょとか、きらきらするはっぱを見つけて走ると、「そっち行っちゃだめ!」って言われる。
「だめよ、何してるの。車が危ないでしょ」って言われて、ちょうちょはもう行っちゃった。
つまんないから、わあって泣いて、そうしたら「お店の中では泣いちゃだめ」って。
だめだめばかりつまんないな。
でも、いちばんつまんなそうなのは、だめだめ言ってるお父さんお母さん。
それがいちばんいやだから、また、わぁって泣いたら、お母さん、まゆ毛をぎゅっとして、「お願いだから」ってつぶやいた。
「行こうよ!」
ひらひらするちょうちょとか、きらきらするはっぱみたいに、わくわくする声でお母さんが言ってから、うちはどたばたの大さわぎ。
おっきいパソコンとか、いっぱいの食べものを車につめて、三人でぎゅうぎゅうになりながら車にのって。
とちゅうで眠くなって、ちょっと泣いて、だけどそうしたら、ぜんぶみどり色のところにいた。 挿絵 ちょうちょがいた。はっぱがあった。まっ赤なはっぱも、きいろのはっぱも。
とげとげしているいがいがの中には、つやつやした茶色いのがあった。
「今日は栗ご飯だな」
お父さんが、いがいがをいっぱい集めながら言った。
「ほら、あっちにどんぐりが落ちてる!」
お母さんが、手をつないで「行こう」って言う。
「畑に水をやろう。何の種だかわからないけど」
お父さんが、にこにこしながらバケツに水をくんでる。
「小さい子なんて久しぶりに見たよ」
近くのおばあちゃんが、毎日会いにきてくれる。
「投げキスして! 投げキス!」
東京から来たお姉ちゃんが、きゃあきゃあ言って追いかけてくる。
畑にお水をあげていたら、お父さんが水を飛ばしてきた。
水を飛ばしたら、あっちもこっちもきらきらして、いっぱい見たいから、走ったらころんで泣いて。
だけど、
「走ってもいいよ、車がないから」
「いっぱい走って、いっぱい転べ!」
お父さんとお母さんが笑って言った。
「あ、ちょうちょ、ちょうちょ!」
うさぎみたいにぴょんぴょんしてはしゃぐお母さんが田んぼでころんだ。
「はしゃぎ過ぎだよ」
お父さんがお母さんを起こそうとして、水たまりに足をつっこんだ。
それで、けらけら笑っていた。
ちょうちょがひらひら。
はっぱがきらきら。
それで、お父さんお母さんがけらけら笑ってる。
目のまえ、ぜんぶみどり色。あたまの上は青。いがいがの中に茶色いの。はっぱは赤いのときいろいのがある。
ここは、ひらひらちょうちょときらきらはっぱ、けらけらしてるまちだよ。

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